D/E判定でも諦めない

模試判定の結果や自分の偏差値と、志望校の合格者平均偏差値を比較して、受験する大学を決める受験生は少なくありません。しかし、そういった型にハマった考え方で受験校を決めてしまうと、医学部受験で失敗しかねません。逆に、受験校の出題傾向と自分の得意・不得意、さらには性格までを考慮して受験校を決定すれば、到底受かりそうにないと思えるレベルの大学でも合格する可能性があるのです。

大抵の人には得意科目と不得意科目がありますが、受験は合計点で合格が決まるため、得意科目の配点が高い大学の方が合格しやすくなります。また、苦手科目の配点が低い場合も、同様に合格する可能性は高いです。
さらに、問題の傾向で言うと、ハイスピードで数多くの問題をこなすのか、難しい問題に時間をかけて取り組むのかによっても向き不向きがあるため、合格が左右されます。自分はどのタイプなのかを客観的に見て判断し、各大学の出題傾向と照らし合わせて受験校を決めれば、模試判定がDであっても合格できる可能性は十分にあるのです。場合によってはE判定でも逆転合格するかもしれません。

ここである受験生の話をしましょう。彼は当時、得意科目である数学の偏差値は60、その他の科目は40~50程度で現役合格を目指している受験生でした。夏時点の模擬試験で物理や化学は30~40点といった状態。当時の担当講師は彼に理科Ⅰの範囲だけやらせ、センター試験に的を絞って学習させました。

その結果、12月にはセンター試験の模擬テストで73%まで取れるようになっていましたが、そんな状況で医学部を受験できるのは推薦入試か、数学と英語だけで受験できる大学、尚且つ英語の問題が易しめの大学しかありません。
彼は本番のセンター試験では84%の得点を獲得できました。しかし二次試験の学科試験が英語と数学のみなのは、秋田大学、旭川医科大学、島根大学、鳥取大学、宮崎大学しかありません。
そこで、英語担当の講師などが彼の性格や問題の解き方を考慮した結果、秋田大学なら苦手な英語もそこそこの点が取れるだろうと判断して、最終的には傾斜配点で86%になる秋田大学を受験させました。偏差値欄ランキングだけを見れば、島根大学や鳥取大学の方が低いですが、本人との問題の相性を考えると秋田大学が良いとの判断でした。そして見事合格。やはり出題傾向と自分の点の取り方を照らし合わせて受験校を決めればE判定でも合は可能なのです。

医学部の場合、他学部と異なり、多浪生が不利になる大学もあります。医学部受験の最終目標は大学に合格することではなく、医師になることです。その目標を叶えるたであれば、どこの大学でも良いから医学部に進学して医師になるという考え方も必要ではないでしょうか。

大学ごとの出題傾向の特徴を掴む

それではいくつかの大学を個別に見ていきましょう。
東邦大学の英語は、医学や生物学の専門的な内容が多く、単語の注釈もないため難しいですが、数学や理科ではあまり難題は出題されません。大阪医科大学の英語は和訳のみで問題数が少なく、一つひとつの表現にこだわって考えないと得点が難しい傾向にあります。また、近年の傾向として数学と理科は英語の難易度と比べると難しくはないでしょう。どちらも難易度の高い大学ですが、英語が得意で理科が苦手な生徒はこのような大学を狙うことも検討すべきです。

また、数学と英語に自信があり、高校の調査書などで基準を満たしている場合は、公募推薦を利用するのも選択肢の1つです。藤田保健衛生大学、愛知医科大学、福岡大学などの公募推薦は、数学と英語の2科目受験。近畿大学は数学と英語に加えて理科が1科目となっています。合格した生徒の平均偏差値も、一般入試に比べるとかなり低いです。もちろん、受験科目が少ないので面接や小論文の比重は高くなりますが、検討する価値はあるでしょう。ただし、推薦入試では大学側が過去問を公開していない場合が多いので、医学部受験専門予備校などの独自リサーチを活用してください。

丸暗記するだけでは解けず、問題が難しいため応用力が必要とされるのは慶應大学です。どの科目もハイレベルな知識を必要とする出題で、かなりの考察力が求められます。受験生にとっては初見の問題と感じるものが多いのではないでしょうか。このような問題を解くために必要な応用力を養うためには、順序立てて考え、解答に結び付ける方法を学んでいく必要があるのです。

慶應義塾大学ほど難しくはなくても、考えることが好きな生徒は、記述式で解答させる大学を受験するのが向いているのではないでしょうか。昭和大学、日本医科大学、東京慈恵会医科大学、大阪医科大学、愛知医科大学などは記述式の中でも考察力が試される問題で、解法を覚えるだけでは解けません。考えることが好きな生徒はこのような大学を受験するのが良いでしょう。

偏差値50台半ばで医学部に入ろうと思えば、易しい問題で問題量それほど多くない大学を受験すべきです。たとえば、岩手医科大学、東海大学、川崎医科大学、福岡大学などがそれにあたります。問題が易しく、解答するスピードも要求されない場合、勉強ができる受験生とそうでない受験生の差がつきにくいのです。ですから、確実に解きさえすれば逆転合格の可能性が高くなると言えます。

これらの大学は、大手予備校の模試での合格偏差値は65前後なのですが、実際には偏差値55前後で合格している受験生もいます。ですから合格偏差値が10低い程度なら、対策次第では十分合格できる範囲なのです。
日本大学や埼玉医科大学の英語のように、問題は難しくないけれど出題量が多い大学もあります。これらの大学はあえて問題を捨てるという判断をした方が良い場合もあるのです。解ける問題をきちんと振り分けるというテクニックは必要になってきます。

また、東京医科大学、獨協医科大学、埼玉医大学、杏林大学などは、長文問題など全部読んでいては制限時間ないに間に合わないので、まず設問を先に読み、長文は問われている箇所の前後だけを読むということが必要な場合もあります。また、文章の内容とは関係なく、文法的知識だけで解けることもあるのです。
さらに、長文問題とそれ以外の問題のバランスを考えた場合、長文の配点が大きければ、その他の文法問題などをいかに早く正確に解いて、長文問題にどれだけ時間を回せるかで合否が決まります。この時間配分もテクニックを必要とするものです。特に、東京医科大学のようにマークシート方式で問題数が多い大学は、知識や処理能力のスピードが問われます。

数学は誘導型問題かチェック

数学の問題では、問題タイプが小問集合問題、誘導型問題、非誘導型問題の3つに分けられます。
小問集合問題とは、比較的容易に特定分野の特定知識を使って解答できる問題です。誘導型問題は、大問中に答えへと誘導してくれる文章や小問があり、小問をきちんと理解していけば自然と解答に導かれます。
非誘導型問題は、大問中に解答へと誘導してくれる小問が無く、式の立て方、考え方、計画に至るまで、全て自分で処理しなければならない問題です。これを解くには、「どの角度から考えるのか」という視点や発想力を必要とします。数学で点を稼ぎたい受験生は、非誘導型の問題で他の受験生と大きく差をつけることが可能です。しかし、数学が不得意な受験生は、標準問題の解法をしっかりと身につけて、誘導型の問題で少しでも加算してくことが合格に繋がります。
このように問題の質や傾向を研究していけば、単に難易度が高いか低いかだけではなく、問題のスタイルから自分に有利な大学が導き出せるのです。

捨てるべき問題には手をつけない

問題を解くときは、難しい問題にいつまでも時間をかけて悩むのではなく、分からなければどんどん先に進んでください。解けない問題に執着したり、惑わされているのは、はっきり言って時間の無駄です。
それは受験勉強の段階でも同じことが言えます。過去問や練習問題を解いていて細かい知識も必要だからといってそこまで勉強し始めると、どんどんマニアックになってしまい、いくら時間をかけても受験には間に合わなくなってしまいます。その結果、必要な勉強をする時間が無くなり、落としてはならない重要な問題を落としてしまうのです。取るべき問題はどれか、無視すべき問題はどれかをしっかりと短時間で見極める必要があります。そして取るべき問題で確実に解答して点数を獲得することが大切です。

捨てるべきマニアックな問題は、大学によっては10問中2~3問ある場合もあります。どれが捨てるべき問題なのかを判断するには、志望校の過去問を徹底的に研究して傾向を掴むしかありません。ただ、これはやや上級テクニックであるため、判断に不安があるなら医学部受験に精通した人のアドバイスを受けることをお勧めします。