複雑になってきた受験科目とスケジュール

現在50代以上の方が受験生だった頃は、国立大入試は一期校、二期校制となっていて、40代の方の頃なら、現在の「センター試験」は「共通一次試験」と呼ばれ、国公立大と産業医科大学の志願者に対してのみ行われました。共通一時試験は1979年から1989年までの11年間実施されましたが、1986年までの8年間は、各大学が実施するのみ。推薦入試は一般入試より前に行われ、AO入試が登場したのも今から約20年前で、それ以前は存在していませんでした。昔よりも今の入試は受験科目もスケジュールも複雑になってきているので対策を間違えると失敗の原因になってしまいます。

AO入試ではどの学校でも書類審査、面接、小論文が課せられ、さらに国公立大ではほとんどの大学でセンター試験を受験することになり、これらの結果から合格者が決定されます。AO入試の試験日程は、出願は8月頃、試験は9月頃からと実施も早いため、いかに前もって対策をするかで合否が決まります。

公募推薦入試は、国公立大の多くの場合、センター試験の結果と書類審査、小論文や面接で選考されます。私立大の場合は、10~11月頃に出願し、11月頃に面接・小論文・基礎学力試験を実施します。ここでのポイントは、医学部の場合、公募推薦入試の半数近くが地域枠だという点です。

一般入試では、国公立の場合センター試験があり、その後二次試験(個別学力試験)の前期日程、後期日程と続きます。私立大の中には、センター試験を利用する大学もあり、その場合、センター試験での必要科目が大学によって異なりますので、二次試験や併願校との受験科目の兼ね合いが必要です。

定員増でも医学部受験は難関

近年の医学部入試の傾向を細かく見ていく前に、大前提として、医学部は他の学部に比べて飛び抜けて倍率、試験問題のレベルが高く、大学間の偏差値格差が小さいということをお話しておきます。なぜなら、受験生の保護者の方と面談をしていると、特に保護者の方が医学部出身の場合、その当時の受験と同じだと考えている方が多い傾向にありますが、当時と比べて医学部受験は格段に難しくなったと思って間違いありません。現在、医学部に合格するには、少なくとも60以上の偏差値が必要です。誰でも簡単に合格できるという大学はありません。保護者の方もその覚悟で受験生を温かい目で見守るとともに、協力してもらうことが大切になってきます。

医師不足解消の政策として、国は2006年に「新医師覚悟総合対策」を、2007年には「緊急医師確保対策」を打ち出しました。その結果、2008年度から医学部の定員が増え続けています。2007年度には、7625人だった医学部の総定員が、2011年度には8923人、2012年度には8991人に増え、この傾向は2019年度まで続くことが決定済みです。しかし、単純に定員が増えたといっても、入試のどの募集区分を増やすかは大学によって異なります。自分の志望校が、一般入試、推薦入試、AO入試、編入学試験のどの枠で定員を増やしたのかは、きちんと調べておく必要があるでしょう。ここ数年は、地域枠や県外地域枠が導入され、この地域枠で定員を増やしている大学も少なくありません。

地域枠は、出願資格を地元出身者に限定している場合が多く、また、卒業後の一定期間、大学の所在地域や指定病院で医師として勤務することが義務づけられていることもあります。地域枠だから受験できないと諦めるのではなく、どのような条件が定められた地域枠なのか、その条件に自分が該当するかどうかを、事前にきちんと確認しましょう。

地域枠を上手に活用

1997年に札幌医科大学で初めて導入された地域枠は、後に国公立大を中心に広がり、最近は私立大でも積極的に導入されるようになりました。2013年度以降も地域枠は増員の傾向にあります。

先程もご紹介したように、自分の出身地域の大学による地域枠だけが受験可能なのではなく、卒業後の勤務地が指定される場合は、その地域で勤務することができれば受験の可能性が広がります。地域枠は競争率が若干低めになることもあり、地域医療に関心を持っていて受験校のある地域で勤務が可能なら良いチャンスになるはずです。

しかし、地域枠受験は、大学によっては夏ごろから小論文を提出したり、市長・町長・村長などとの面談が必要だったり、地域の施設で参加したボランティアのレポートを提出しなければいけないなど、大学によっては負担も大きいものとなっているため、それなりに本腰をいれた準備が必要です。

過去に受験した全私立大学で失敗し、センター試験でも8割以下の結果だった受験生は、夏休み前に老人ホームを回ったり、市長を訪ねて地域医療のレポートを提出するなど努力を重ねた結果、地域枠で島根大学に合格しました。こういった事例もあるので、センター試験で良い結果を出せなくても、地域で頑張りたいという熱意があれば、逆転する可能性もあるのです。
ただ、地域枠は、1つのチャンスではありますが、前述の様に医療現場で研修を行い、レポートを書くこともあるため、それらばかりに時間を取られると失敗した時のダメージも大きくなります。ですから、受験するかは条件と受験内容を基によく考えて決めていきましょう。

個別対策が重要な私立大と基礎知識を重視する国公立大

私立大の場合、出題傾向は大学ごとで異なります。英語の長文問題の中に、医学部用語の知識が必要な医学論文の一部を引用して出題したり、生物では高校で習わない内分泌系の問題を出題したりと、高校の学習範囲以上のものを要求する難しい問題を出す大学もあります。また、試験時間に対して問題量が多く、正確かつ迅速な問題処理能力が試される大学も少なくありません。ですから、私立大入試においては、過去の入試問題を徹底的に分析し、対策を立てる必要があるでしょう。

一方、国公立大の場合は、高校の学習指導要領から逸脱する問題を出すことはそれほど多くありません。また、他学部と共通の試験問題を出題する大学も多く、基礎知識を重視しています。そうなると私立大学より国公立大の方が楽だと考える人もいますが、残念ならがそうではありません。基礎知識を正確に理解した上で、論理的に考えながら応用して、論述する必要があるのです。さらにセンター試験(5教科7科目)の合計点で85~90%以上を取らないと合格は難しいというのが厳しい現実です。

なお、国公立大の中でも、旧帝大系(国立7大学)や新潟大学を除く旧制医科大学系(国立6大学と公立1大学)、4大学を除く旧医学専門学校系(国立12大学と公立7大学)は二次試験が重視されています。また、新潟大学、群馬大学、信州大学、鳥取大学、徳島大学、新設医大(国立17大学)はセンター試験重視です。防衛医科大学校は試験日が早く、年内に独自の入試を実施します。

ところで、近年の傾向として、私立大学でもセンター試験利用入試が増えてきています。私立大の一次試験対策をしなくても、合格のチャンスを増やせるのですから、国公立大学を目指している受験生にとって、センター試験利用入試の私立大は併願する価値が高い大学になるでしょう。