ますます重要になる「チーム医療」

近年の医療現場を見ると、チーム医療の考え方はだいぶ広まってきたようです。その背景には、医療の高度化が進んで複雑になり、医師1人では対応しきれなくなったことと、患者が質の高い医療を求めるようになったことが挙げられます。

たとえば、胃がん患者を例に挙げてみましょう。従来の医師主導型の医療では患者は外科に回され、外科からの指示で様々な治療がなされてきました。ところが、チーム医療では、がんを摘出するのは外科ですが、化学療法が必要であれば内科が担当し、放射線治療を必要とすれば放射線科が担当しなければなりません。痛みが強ければ緩和ケアも必要になりますし、精神状態によっては心理カウンセラーを必要とする場合もあります。当然、看護師や食事指導の管理栄養士、薬剤師なども関わってきます。経済状態によっては、ヘルパーや医療ソーシャルワーカーが加わることもあるでしょう。これら各専門従業者が医師を中心に1つになって会議を開き、カルテなどの情報を共有して治療方針を決定していきます。場合によっては、患者の家族もチームの一員となって、最新の知見や化学的根拠に基づいた治療を行うことができるのです。

これまでの医師主導型では、科が異なると連携を取るのが難しい状態でした。しかし、チーム医療の中でどの科も対等に関わって機能していけば、患者一人ひとりが納得できる医療が実現するのではないでしょうか。

チーム医療先進国のアメリカでは、チーム医療を行う事でさらに治療効率が上がり、各種検査値の改善、罹患率、志望率、生存率、合併症の発症率、感染症や副作用の発生率、研究手術や処置の発生率などの臨床的カムアウトが改善され、入院期間の短縮に繋がると考えられています。アメリカのチーム医療では、各専門従事者に「自分と立場の違う相手の話を聞き、互いを尊重するコミュニケーション能力」「自分の仕事における責任感」「何を目指しているのかというビジョンと、そのビジョンを達成するための使命感」が要求されます。

チーム医療という考え方がようやく日本でも広まってきましたが、今後の医療でこの考え方はますます重要になってくると同時に、医師にも前述の3つの資質が求められてくることになります。
時代の要求に応えて、大きな病院では患者を社会面・経済面・心理面などの様々な視点から観察し、個人に合った医療を行う総合診療科が増えてきました。特定の部位や疾患に限定せず、多角的に診るプライマリーケアと呼ばれる初期診療を行っています。総合診療科で発症原因が突き止められると、患者は適切な診療科や医療機関へと引き渡されるので、ここでも医療関係者同士のチームワークが大切になるのです。

予防医療の時代へ突入

近年の医療では、予防医療も重視されるようになってきました。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、代謝症候群)というような言葉が話題になったり、医療制度改革で度々議論されるようになったことも予防医療が重視されるようになった理由の1つではないでしょうか。ここでの予防医療とは、病気予防を目的とするだけではなく、健康で長生きすることまでを視野に入れたものです。発症そのものを防ぐ1次予防と、発症しても早期発見で治療する二次予防があり、その範囲は非常に広くなります。日本人の寿命が延びたことで、身体的だけでなく精神的にも健康で長生きするという健康寿命の長さが問われるようになったのです。

では、病院が行う予防医療にはどのようなものがあるのでしょうか。まず、目的や効果がはっきりしているものに、予防接種があります。次に、糖尿病、高血圧、高脂血症など生活習慣病の治療や骨粗しょう症といった大きな病気にかからないための治療など。さらに、生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防するための食事指導や運動指導などが挙げられ、病気を未然に予測して防ぐための様々な検査や健康診断もあります。

他にも、予防医療として将来の疾患リスクを知るための遺伝子検査も含まれます。遺伝子検査からは、肥満、血圧、インスリン抵抗性、血栓などのリスクが分かるのです。これらの遺伝子リスクを知ることで、無理な食事制限をしなくても生活習慣病を防げる人とは逆に、今は問題がなくても、食事制限をしておかなければ生活習慣病にかかる可能性がある人を見つけ出せます。血液検査からは腎機能や肝機能、脂質代謝、糖尿病、痛風、貧血などが分かり、遺伝子検査と併せて行うのが良いとされています。ただし、遺伝子検査には、就職差別や結婚差別、保険加入時の制約など、倫理・社会的問題に繋がる懸念点があることも忘れてはいけません。

このような医療は、辛い症状がある病気の治療法とは異なり、予防のために病院に行くかどうかは本人の意思次第というのが問題です。差し迫った症状がないため、ついつい後回しにしてしまい、気がついたらすでに病気に向かって進んでいることがあります。ですから、予防医療を浸透させるには、普及させる医療の努力も大いに必要と言えるでしょう。
これからの医療には、病気のプロとしての顔だけではなく、健康のプロとしての顔も求められるということなのです。