なるほど。では、それぞれ医学部大学と、医学部を目指す予備校で教育に携わっているお2人が考える“良い医師”とは、どんな医師だと思われますか?

松井 テーマが大きすぎるので(笑) 一言では言えませんが、大学病院の理念に「我ら、弱き人々への無限の同情心もて、片時も自己に驕ることなく医を行わん」を掲げています。病院の正面玄関にもエスペラント語で彫ってあるのですが、謙虚でいつも患者さんの身になって物事を考えることができることが大切だと思いますね。やはり、医師は人を診る職業ですから、共感する心が必要です。

可児 僕は、医師ではないので(笑) 一般的には病気を治すのがお医者様の仕事と考えられがちですよね。でも病気の時や身体が弱っていると、どうしても心も弱ってしまうんです。ですから、そんな時、親身になってくれるお医者様がいると、やはり安心しますよね。生徒たちには病気だけを診るのではなく、患者さんを一人のひととしてきちんと見て接することができる医師になってほしいと思います。松井先生のお話にもありましたが、患者さんの身になってくれる医師がいれば、また診て欲しいと思いますね。

藤田大学病院外観
正面玄関にはエスペラント語で大学の理念が彫ってある

そうですね。では、その“良い医師”になるために何が必要だと思いますか?

松井 知識や技術など医療に対してのテクニカルスキルだけじゃなく、人間関係を上手に構築するための能力(ヒューマンスキル)と患者さんの問題点を見つけたり、適切な臨床判断をするための概念を作り上げる能力(コンセプチャルスキル)が必要です。そのために、本学では1年次より患者さんと接する時間を設けるため、毎朝7時30分に大学病院の正面玄関で患者さんを出迎えて車イスの介助をしていますし、献体グループの協力を仰いで医療人にとって大切な心構えの話を聞くなどの機会を設けるようにしています。また、近年は医療の高度化がますます進み、チーム医療が重要になってきています。人を診て、人と働くのが医師ですので、コニュニケーション能力は必須だと思います。

可児 松井先生のおっしゃる通り、人を相手にする仕事なので、やはりコミュニケーション能力を高めることが必要だと思います。特に最近の生徒は、会話のキャッチボールが出来ない子が多いと感じます。

日本の医師国家試験には、人格評価が皆無ですが、ヨーロッパで医大生に行った人格検査で外向性が高いと、その後の臨床医として優秀になっている人が多いそうですね。

松井 日本の医師国家試験は大変よい問題ではありますが、知識を問う試験です。今や、臨床医に必要とされる人格形成などはグローバルスタンダードでは必ず取り上げられています。大学としては、知識の勉強と一緒に、これも行わなくてはいけない。やはり、患者さんから信頼される医師になってほしいと思っています。そのために、本学では、コミュニケーションスキルを養うための取り組みや少人数でのグループでの活動を意識的に取り入れています。

可児 特に最近の生徒は、話をしない生徒が多いように感じます。本校は、1対1の個別授業ですので、生徒も逃げ場がない分、授業を続けていく中で会話が増え、それにともない成績も伸びていきます。話す力や、聞く力は、国語力、理解力につながると思います。勉強だけでなく、個別授業の特性を活かし、生徒とのコミュニケーションも意識しています。
現在の医学部入試は国公立も私立も面接試験が試験科目として課されていますし、コミュニケーション能力については昔と比べてもはるかに高い能力が求められているように感じます。