小論文で求められる人間力や想像力を身につける方法

医学部を志望する人はほとんどが理系だと思います。中には国語に苦手意識を抱いていたり、今まで読書に馴染みがなかったという人も多いのでは? 現在、ほとんどの医学部の二次試験では小論文が課せられていて、この小論文と読書は切っても切れない関係にあります。「小論文は訓練」という言葉は間違っていませんが、例えば順天堂大学のこのような問題を前にした時にどんな訓練が役に立つと思いますか?

“ロンドンのターミナル、キングス・クロス駅。下を向きながら階段を上る長いコートを着た男性の後姿がある。構内は少し暗いが、階下には色鮮やかな赤い風船が2個、2本の糸で結ばれ浮いている。「キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい」”。

ここで問われているものはその人が書いた小論文からにじむその人の人間力や想像力といったもので、数学のように必ずひとつの回答があるものではありません。しかしその形のない測ることのできない力は、医師となった暁には必ず必要な力のひとつです。人間力や想像力はコミュニケーション力と同様にそれを身につけるためのマニュアルはありません。一人ひとりの人間力や想像力の形は違っていて、個々が今まで生きてきた毎日の生活で経験し、感じたり、考えたりという積み重ねによって形成されていくものだからです。私たちが人間力や想像力を身につけるために出来る唯一の方法論的なこと…それが読書です。

読む本は多肢に渡っているほうが良い

医学部小論文のために読書をすると考えると医療系の専門的なトピックを取り上げた本ばかりに手が伸びてしまいそうですが、実は多くの大学で人文哲学系の小論文の問題が出題されています。例えば自治医科大学では以下のような問題が過去に出題されています。

“柳田邦男「事実を見る眼」文中に登場する二人のがん患者の生き方に対する考えを述べよ。”(2014年)

“正岡子規の5つの文章より 不治の病で死を迎えつつある子規。妹の律は、兄に悪口を言われながら看病に励んでいる。子規に手紙を書く。なお、自分が創作したエピソードを加えても良い。”(2012年)

2題とも柳田邦男や正岡子規を深く知らなくても書ける問題ではありますが、人文学的な読み物に触れた経験や馴染みがなければぎょっとする問題かもしれません。子規の書いたもの自体に触れたことがなくても、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読んでいたからなんとなくその時代背景がわかり想像力が働く、といった具合に本と本の間、本と歴史や社会といったものにはたくさんのつながりが存在します。現役生でまだ時間がある人ならば、そのつながりをたどるようにして様々なジャンルの本に自由に手を伸ばすことをしてみましょう。それが自然にできるようになれば広い知識を無理なく吸収する一助となり、医師になった時にも必ず役に立つことでしょう。

時間がない受験生はとりあえずブルーバックスを手に取ってみよう

1年以内に受験を控えている待ったなし状態の受験生で、何を読んでいいのか全く見当がつかないという人は、講談社のブルーバックスシリーズを手に取って休憩時間や移動時間などを利用して読んでみましょう。ブルーバックスは自然科学分野の読み物を専門とした新書です。医学系のテーマを扱った物も豊富に取りそろえてあり、例えば「発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ(山口真美:著)」、「現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病(岸本忠三、中嶋彰:著)」「意識と無意識のあいだ 『ぼんやり』したとき脳で起きていること(マイケル・コーバリス:著、鍛原多惠子:訳)」といった、医学部受験生の興味をそそり、その本の世界に自然と入り込めるようなタイトルがずらっと並んでいます。また、小論文の勉強をしていて気になった自然科学分野の事柄について書いてある本をブルーバックスの中から探して読んでみる、ということもできます。ブルーバックスに限らず、新書は各出版社が競うようにして毎月新しいタイトルを発刊していて、手頃な価格で専門家の手による最新のまとまった情報を読めることが魅力です。手に取る本に迷った時は、まずは新書の新刊棚へ行ってみるのも良いですね。