今や国民病とも言える「花粉症」。集中力が途切れ、薬を飲めば眠くなり、受験生には非常に悩ましい問題です。今の医療には花粉症を完治する術はありません。なんとか軽く乗り切るには、どんな対策が有効なのでしょうか?

そもそも「花粉症」とは?

花粉症は「季節性アレルギー性鼻炎」とも呼ばれる、アレルギーの原因になる花粉が飛ぶ季節にだけ症状が出る病気です。花粉症は戦後に初めて報告があった新しい病気で、1960年代から急激に罹患率が増加、今では日本人の約25%もの人が花粉症だと言われています。患者数増加の原因は、戦後に大量植林されたスギが開花適齢期になっていることや、大気汚染によってアレルギー症状が起こりやすい環境になったこと、舗装道路が増えて地表に落ちた花粉が再び舞い上がりやすくなったことなどが考えられます。ちなみに、千葉県船橋市での飛散状況を調査した結果、2005年から2014年の10年間の飛散量平均は、1995年から2004年の10年間の飛散量平均の約2.5倍になっているそうです。また、現代社会のストレスフルな生活もアレルギーの発症を助長すると言われています。

花粉症の原因となる植物は日本に約60種類もあり、主なものにスギ、ヒノキ、シラカンバ、ブタクサなどがあげられますが、原因がスギとヒノキである人が圧倒的です。関東ではスギは2月頃から4月下旬、ヒノキは3月頃から5月末頃まで花粉が飛びます。くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみや異物感といった症状は、花粉の飛散量に比例してひどくなります。そのほか、のどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢や熱っぽい感じといった症状が出る人もいるので、主にスギやヒノキの花粉が飛ぶ春先にこういった原因不明の不調を感じている人は、花粉症の可能性があります。また、シラカンバやハンノキ、イネ科の花粉症の人は、ある果物で口の中がかゆくなって腫れる「口腔アレルギー症候群」を併発することがあります。口腔アレルギー症候群を引き起こす代表的な果物に、リンゴ、モモ、さくらんぼ、カキ、キウイなどがあげられます。

最近では、ハウスダストやペットの毛などが原因の「通年性アレルギー性鼻炎」と花粉症の両方を患う人や、複数の種類の花粉に反応する人も増えています。

眠くならない花粉症対策とは?

最近のアレルギー性鼻炎用の市販薬は効き目は良いですが、眠くなることが難点。それでは、眠くならない花粉症対策ってあるのでしょうか?

実は、効果が実証されていて眠くならない花粉症対策は、病院を受診して、ドクターと相談する他ありません。また、症状が出る2~3週間前からの受診が特に効果的。病院で処方される抗アレルギー薬は眠気などの副作用がない代わりに、即効性がなく、花粉が飛散する前から服用を開始する必要があるからです。

巷には民間療法と呼ばれる花粉症対策の方法が溢れていますが、どれもこれも科学的な実証がありません。民間療法による症状の緩和には個人差もあると思いますが、根拠のないことのために高価な食材や飲料にお金をつぎこむのはナンセンスだということを念頭に置いておきましょう。

病院での花粉症治療とは?

通院は億劫ですが、受験期の数ヶ月を花粉症で無駄にしてしまうくらいなら、我慢して通いたいところ。病院でできる花粉症治療の主な方法は薬物治療です。他にも、「手術治療」や「減感作治療」といった方法がありますが、リスクを考えると投薬が最も現実的です。ただし、現在、花粉症においては、誰にでも効いて、副作用もなくという治療法はなく、完治させる方法もありません。ある程度の根気を持って、医師と相談しながら花粉症を軽い症状で乗り切る治療法を見つけ出しましょう。

病院で処方できる花粉症の治療薬は、内服や外服を含め今や100種類以上。「くしゃみ・鼻水型」、「鼻づまり型」、そのどちらもある「混合型」といった症状のタイプと、その症状がどれくらいの重さなのか、治療の時期などを合わせて、医師は薬物治療のプランを立てます。使用される薬のタイプは大きくわけて、「抗アレルギー薬」「抗ヒスタミン薬」「ステロイド薬」の3つです。医師はこの3タイプの薬から使用するものとその量を個々の症状に合わせて選択します。

抗アレルギー薬はアレルギー反応を抑制する作用があり、眠気などの副作用がありません。ですが、即効性がなく花粉が飛散する2~3週間前から服用を開始する必要があります。それに対して、市販の花粉症薬や総合鼻炎薬にも配合されている抗ヒスタミン薬は、即効性がありますが眠気やだるさなどの副作用が出やすいという特徴があります。抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応によって体内に起きるヒスタミン作用を抑えて症状を抑制するはたらきをします。ステロイドは花粉症では主に点鼻薬として用いられ、鼻づまり症状の解消に大きな効果があります。ですが、使用法によっては副作用が現れることもあるので、慢性的に使用したり、長期の使用は避けたいものです。

花粉症の治療には、薬物治療のほかに、「手術治療」「減感作治療」といったものがあります。手術治療は一般的に鼻の中のアレルギー症状を起こす粘膜にレーザー光線を当てることで変質させて、症状が出ないようにします。本来は鼻づまりの治療法として用いられてきたもので、その効果の持続は個人差もありますが1~3年くらいと言われています。また、手術治療には「神経ブロック手術」といった特殊なものもありますが、アレルギー反応はヒトに必要な免疫反応なので、それを遮断してしまうような治療には疑問が残ります。注射で花粉の成分を2~3年かけて少しずつ体内に入れていく「減感作治療」は花粉症で唯一の根治的な治療方法ですが、アナフィラキシーショックといったリスクがあり、最近ではあまり行われていません。

自分でできる花粉症対策が実は基本です

花粉症は原因となる花粉がなければ発症しないので、身の周りから花粉を除去することが最も効果的な対策です。イネ科やキク科の植物による花粉症の場合、これらの雑草から花粉は数mの範囲しか飛散しないので、そういった植物の生えている場所は避けるようにしましょう。スギやヒノキといった樹木の花粉の場合は、天候によって数10kmの範囲で飛散するので、どのような場所にいても花粉症の時期には常に気をつける必要があります。

基本は花粉症情報をテレビやインターネットで得ること。雨以外の天気で、最高気温が高くて湿度の低い、やや強い南風が吹いている日は注意。前日や当日の未明まで雨が降っていて、急速に天候が回復し、晴れた日は要注意日です。花粉症の時期の外出はなるべく控えたいですが、受験生の身ではそうもいきませんよね。そこで、最も飛散する13時から15時の間はできるだけ室内にいるようにする心がけは持つようにしましょう。室内の空気の入れ替えなども、飛散量の少ない午前中にするようにしたいものです。外出の際は、花粉が体に接したり、体の中に入り込まないように、帽子やメガネ、マスクといった装備をし、コートの素材もウールといった花粉が付着しやすい物は避けて、つるつるとした生地のものを選ぶと良いです。屋内や室内に入る前には衣服に付着した花粉を払うようにして、なるべく持ち込まないようにします。帰宅後すぐの洗顔やうがいも効果的です。就寝時の症状でよく眠れないという人も多いと思いますが、寝る前にお風呂やシャワーで花粉を洗い流すだけでなく、水で湿らせたタオルなどで枕元に付着した花粉をふき取るようにしてみてください。

目や鼻の不快な症状を緩和するには、洗い流すことが効果的。市販の人口涙液や生理食塩水を使って、傷をつけないように心がけ、適度行います。花粉症の時期のコンタクトレンズの着用は、涙で花粉を流し落とすことを妨げてしまうので控えましょう。鼻の粘膜の炎症には加湿も効果的です。